◆ 感想文

     研究会2日目の講演者は柳下浩紀先生と、本研究会オーガナイザーである池田幸太氏である。1日目と同様、一講演当たり2時間が用意されており、聴衆は基礎的事項から詳細な部分まで幅広い内容に触れることが可能であり、また質問や議論が活発に行えるように取り図られている。
     柳下先生の講演では、Fisher-KPP方程式やAllen-Cahn方程式など、よく知られた反応拡散方程式の進行波解から話題がはじまり、より抽象的な枠組みにおいて進行波解の存在を議論するための理論手法について紹介された。この手法によって、抽象的な発展方程式の枠組みにおいても、順序保存性などのいくつかの性質が満たされれば進行波解の存在を保証することができる。この話題に関して、以前私は柳下先生の講演を聞いたことがあったのだが、当時は内容を十分に理解することができなかった。今回、講演時間が十分に用意されていたおかげでいろいろな質問をすることができ、柳下先生の研究動機をはじめ、その内容に関する理解が進み、大きな収穫となった。
     池田氏の講演では、今回の研究会の講演者の方々と池田氏の研究接点を俯瞰しつつ、Lotka-Volterra2種競合系に関する反応拡散方程式モデルと常微分方程式コンパートメントモデルの関係を中心に、近年の研究内容について紹介された。池田氏は他の講演者の先生方とは対照的に、数学的な内容については詳しく触れず、現象からの視点中心に講演を進められたように思う。現象数理学の研究に対する姿勢や今後の方向性などをちりばめた、若き研究者としての池田氏の個性に満ちた刺激的な内容であった。
     今回のシンポジウムは、数学解析の部分に重きを置いた点で第1回、第2回と趣が異なっていたが、振り返ってみれば純粋数学出身の研究者、自然科学出身の研究者のどちらに対しても新鮮な刺激を受ける、周到に準備されたプログラムだったと思う。素晴らしい講演をされた3名の先生方(柳下先生、及び1日目に講演をされた神保秀一先生、大下承民先生)、及びこのような研究会に参加できる貴重な機会を与えていただいた池田氏に改めて感謝の気持ちを述べ、本感想文を終える。

    若狭徹(明治大学研究推進員)

     本シンポジウムの初日の感想を述べる。偏微分方程式の理論解析の専門家により数学的な結果が平易な解説とともに紹介された。1つの講演に対して2時間配分してあり、講演中に随時質問するスタイルでおこなわれた。実際に多岐にわたる分野の方々から様々な質問がなされることで理解が深まった感がある。このような機会は私にとってはとてもありがたく、似た感想をもった方も少なからずいたのではないかと思う。神保秀一先生の講演では領域変形による偏微分方程式の解の変化について、固有値・固有関数を通して扱われた。このテーマは工学において現れる最適形状設計や破壊問題とも関連するため重要であると考える。大下承民先生は物理的現象からスタートして、ミクロモデルとマクロモデルの関係を数学的に扱われた。これは、モデリングをおこなう際に説得力のある説明を与える上で重要である。
     後者のような手法で正当性を与えた偏微分方程式を、前者のような手法で偏微分方程式の解の性質をみるというストーリーは現象数理学の理論面において大切であり、講演をしていただいた先生に感謝するとともに本シンポジウムのお世話をされた池田幸太先生の研究スタイルが反映されていると感じた。初めて本シンポジウムに参加したが、現象を扱う上で有用な数学的手法を学べるとても教育的かつ有意義なものであった。

    野津裕史(明治大学研究推進員)