* Abstract*
◆ 神保秀一(北海道大学理学研究院)

 空間の領域上でラプラス作用素等の2階楕円型作用素の固有値(やスペクトル)を調べる研究は, フーリエの時代に熱や波動や振動の現象を方程式を通して解析することが始まって以来ずっと重要な課題であり続けている。クーラン・ヒルベルトの本が書かれた時代以降は問題が定式化されスペクトル解析の枠組みで扱われるようになった。アダマールは領域を滑らかに摂動させたときの固有値やグリーン関数の変化率を調べた。 一方で, 領域が特異的な変形を受けたときの固有値や固有関数がどう変化するか,というテーマも重要な課題とされている。 これは 物質に小さな穴や欠損や不純物が含まれる, とか, 物体に非常に薄い(細い)部分がある, というような状況のモデル化になっていると解釈できるからである。 穴のある領域に関して小澤真は1980年頃に画期的な前進を与えた。 最近これについてもう少し汎用性のある別のやり方を考案した。また類似の方法を小さな導体を含む空間での電磁波の振動の問題に適用した。 一方ダンベル型の領域等の薄い部分を含む領域では多種のタイプの固有値が共存する。 特にその一部は"共鳴型"とも言える固有関数の困難が容易でない挙動をする。 このようなものを含め固有値の漸近挙動を表現する摂動公式を導出した。 後者については文献 S. Jimbo-S.Kosugi, Spectra of domains with partial degeneration. J. Mathematical Sciences, Univ. Tokyo 2009 参照。