*Abstract*
◆ 佐々木顕(総合研究大学院大学)

 インフルエンザ新系統の出現予測は公衆衛生上極めて重要である。抗原決定座位に突然変異が起きたウイルスの新系統が,宿主集団の免疫からエスケープして広がるかどうかは、その系統を生んだ親系統の流行規模に強く依存する。そこで、新系統の感染者数の動態を出生死亡過程で定式化し、定着確率を求めよう。新系統に対する宿主集団の感受性は、親系統の流行とともに変わるため、時間依存の出生死亡過程になる。  解析の結果、 (1) 新系統の定着率は、その導入時期が親系統の流行時期にさしかかると急落する。そのため、成功する新系統の出現時期の分布は親系統の流行の前にピークを持つ。(2) 感染率の季節性をモデルに入れると、春先の流行がウイルスの次世代を担う系統を生みやすい。(3) 逆に、冬に流行する系統は、流行規模は大きいが、子孫の定着率は低く、進化のデッドエンドになりやすい等が示される。これらの結果は、流行の最盛期に生成される多数の突然変異系統よりも初期の系統をターゲットにするべきなど、ワクチン政策に重要な指針を与える。