*Abstract*
◆ 井元清哉(東京大学)

 新型インフルエンザA (N1H1) の国内流入を防ぐため、4月下旬から5月下旬まで行われた成田空港での空港検疫の有効性を検討した結果、非常に少ない感染者しか検出できないことがわかった。この結果は、潜伏期間が長い感染症ほど顕著であり、そのような感染症の水際対策としては空港検疫は有効に働かないことが分かった。そこで、新たな空港検疫の役割として、国内に流入した感染者数のモニタリングシステムを考察した。統計科学的手法により、空港検疫をすり抜け国内に流入した感染者数を推定し、その結果、今後どのように感染が広がるかを数理モデルにより予測する。数理モデルとして、SEIRモデルにおいて、流入してくる感染者を外的変数として表現し、学級閉鎖のような期限付きの行動規制を伴う社会的介入をモデル化したSEIRix モデルを構築し、インフルエンザの感染が広がる中で、いつ、どのような規模でそのような社会的介入を行うのが最も効果的であるかを研究した。感染した患者が病院に殺到し病院の機能を麻痺させることを防ぐため、感染者のピーク人数を減少させるという目的には、早すぎる、もしくは、遅すぎるタイミングでの介入は有効ではないことが分かった。